ストーリーズ
project#004 ANY1 CHOCOシンガポール店の内装タイル
projects#004
ANY1 CHOCOシンガポール店の内装タイル
Date:2024
Client:日本ハイドロパウテック
Craft:大西陶芸
Design:upsettters architects
OUTLINE
独自の加水分解技術とノウハウで素材から食品開発の可能性を拡げる「日本ハイドロパウテック株式会社(以下、NHP)」による、100%プラントベースの原料を使ったオリジナルチョコレートブランド「ANY1 CHOCO(エニワンチョコ)」のシンガポール店に使用される内装タイルを製作しました。
日本ハイドロパウテック株式会社 ジャーナル記事より
(左:NHP 代表取締役 熊澤正純さん、中:大西陶芸 大西先さん、右:株式会社ロッテ 執行役員 芦谷浩明さん)
photo:Yohei Sogabe
Photo : upsetters architects
BACKGROUND
NHPは株式会社ロッテと「チョコレート領域を中心とした技術革新とアップサイクル等を通じた、新たな価値創出、社会課題解決」を目指すため、資本業務提携契約を締結。その挑戦のひとつとして、今まで捨てられていたチョコレートの副産物「カカオハスク」の有効活用は大きな課題でした。このチョコレートの製造工程で発生するカカオハスクを店舗の内装に活用できないか?という相談を頂き実験が始まりました。
Photo : upsetters architects
IDEAS / PROCESS
製作を手がける大西陶芸と窯業試験場協力の元、先方から預かった加水分解されたパウダー状のカカオハスクの成分分析を行い、釉薬への定着方法を試験しました。
まず、そのまま生のカカオハスクを釉薬に混ぜて使用したところ、分離してしまい上手くいきませんでした。
そこで、一度カカオハスクを焼いて、灰にしてから釉薬に混ぜ込んでみたところ、うまく釉薬に溶け込み、良い風合いが確認できました。
形状はデザインの意図として、チョコレートのタブレットと同様のサイズ、テーパーの再現を求められたため、オリジナルの型を作成し、一枚一枚焼き上げました。手法を確定した後、焼成方法の違いによる検証を行いました。焼成には、窯の中に酸素を送り込みながら行う酸化焼成(OF)と、酸素が少ない状態で焼成を行う還元焼成(RF)があります。検証の末、今回はより風合いの良い還元焼成を採用しました。
最後は、カカオハスク灰・釉薬・鉄を混ぜ込み、各配分を数パーセントごとに分類し焼成試験を行い表情や質感を追求しました。
Photo : upsetters architects
RESULT
実験によってカカオハスクの割合が鉄粉による赤褐色の色合いに柔らかさを生むことがわかったため、イメージに近づくようコントロールして理想の表情を求めました。手仕事による独特の揺らぎが、エッジの傾斜によって表情の奥行きにつながりました。最新の技術と手仕事の融合、そして、アップサイクルとしての社会的な意義など、タイルという素材の新しい可能性が垣間見れるプロジェクトとなりました。
協力:日本ハイドロパウテック株式会社
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