ストーリーズ
projects#005 新JR松山駅の内装タイル
projects#005 新JR松山駅の内装タイル
Date:2024
Client:四国旅客鉄道株式会社
Craft:大西陶芸
Design:四国旅客鉄道株式会社
OUTLINE
JR松山駅リニューアル事業は、松山市の市街地分断および交通渋滞の解消を目的とした大規模な都市基盤整備プロジェクトです。この事業は、約2.4kmにわたる鉄道の高架化を通じて都市機能の一体化を図るとともに、土地区画整理事業と連携することで、より利便性の高い都市空間を実現することを目指しています。
デザインコンセプトは「培われた歴史・文化を未来に架けるシティゲート」。松山城を核とした新たなランドマークの創出や、地域の歴史と伝統を現代的に再解釈した景観形成が特徴です。このリニューアル事業において、愛媛県産材の使用やバリアフリー設備の充実を進める中で、愛媛の伝統工芸である砥部焼の採用が検討され、ShiroAoは、内装に使用する特注タイルの制作を担当しました。
BACKGROUND
JR松山駅は、愛媛県の中心市街地への重要な玄関口です。そのため、駅のデザインには単なる機能性だけでなく、訪れる人々に愛媛の魅力を伝える役割が求められました。このプロジェクトでは、地域色を強調するため、砥部焼をふんだんに活用することが重要な課題とされました。
依頼内容は、砥部焼の伝統的な魅力を活かしつつ、現代的な駅空間に調和するデザインを追求すること。さらに、砥部焼らしさと愛媛らしさを視覚的に表現し、訪れる人々に地域の文化を感じてもらうことが求められました。
IDEAS / PROCESS
形状 について
タイルの基本寸法は、松山の文化に根付く俳句短冊をモチーフに、W60mm × H360mmと設定。この形状は、シンプルでありながらも伝統的な雰囲気を醸し出すデザインとなっています。また、断面はフラット形状とし、釉薬の自然な色むらが際立つよう工夫されています。
色について
松山の過去と未来をつなぐ象徴として、「春や昔十五万石の城下哉」の句に着想を得て、駅全体を「春」の再生と重ね合わせ、淡いパステルカラーを基調に、透明感のある釉薬でしっとりとした質感を表現。彩度を抑えた色彩で、木材やセメントとの調和も考慮しています。
具体的には、男性トイレには砥部焼の伝統色である呉須を使用し、「空」をイメージ。女性トイレには淡いオレンジを取り入れ、愛媛特産の「みかん」を象徴しています。
理想の色味を追求するために、呉須藍色2種類、オレンジ用に赤3種類、黄色2種類の絵の具を配合。さらに、配合比率と濃度を細かく調整することで、深みと透明感のある色合いを実現しました。こうした試行錯誤のプロセスを通じて、砥部焼ならではの自然な色むらと風合いを最大限に引き出しています。
RESULT
制作した砥部焼タイルは、手仕上げによる一点一点の奥行きと豊かな表情が特徴です。合計で1,100枚を制作し、そのすべてが大西陶芸による手仕上げで仕上げられました。特注タイルは、釉薬の繊細な色むらと質感を美しく再現し、駅空間に温かみと深みをもたらしています。
これまで日用食器として親しまれてきた砥部焼ですが、今回の実績は、日用食器以外の新しい可能性を世の中へ発信できる価値ある取り組みとなりました。公共空間で使用されることで多くの人々の目に触れ、砥部焼の持つ多様な可能性がさらに広がることを期待しています。
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